親子で描き、繋げる京都の伝統技法 - 自由でダイナミックな絵柄が躍る、手描き京友禅の魅力とは

親子で描き、繋げる京都の伝統技法 - 自由でダイナミックな絵柄が躍る、手描き京友禅の魅力とは

茶谷 匡晃

21.07.10

茶谷 匡晃

【京都と着物】と聞くとみなさんはどんなイメージがありますか?
艶やかな着物を身にまとい祇園の街を歩く舞妓さん、上品な着こなしの茶道の先生がゲストをもてなす姿など、限られた一部の人達がきちんと着るもの、というイメージがあるかも知れません。着物の中でも京友禅と呼ばれる技法で作られるものは豪華で優雅な模様や図柄が特徴で、日本にとどまらず海外の着物ファンにも知られています。そんな伝統的な京友禅の技法を基に、ぬれ描き友禅という独自のスタイルを用いて日々の生活で気軽に身に付けられものを作る作家さんをご紹介します。

京都北山に工房と店舗を構える手描き友禅・碧の荒谷尚さん(@nao_aratani)にお話を伺いました。

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色鮮やかでダイナミックな手描き友禅

染められた糸を織って着物の模様を作るのではなく、白い生地に直接筆で色を付けて絵を描くように模様を描いていきます。手描き友禅の特徴は何と言っても、多色でとても色鮮やかに描かれているところです。色挿し(色を付ける、着色する事)に使う染料は基本となる色が約20種類ほどあり、それを調合してさらに何十種類もの独特な色合いを作りだしていきます。それらの色で描かれる絵柄はダイナミックで躍動感あふれるのびのびしたものばかりです。デザインの自由度が格段に高いところが魅力で世界に二つとないものが完成します。

そして模様のグラデーションの美しさ。まるで水彩画の様に絵柄が生地に描かれ模様が映えます。【ぼかし】や【にじみ】といった独特の技法で、淡い色合い、明るい色が際立ち、透明感と同時に暖色の温かみも感じられます。

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デザインから仕上げまで、心をこめて

西陣織や友禅染など京都で作られている着物の生産工程は複雑に細分化された分業制であることが特徴です。友禅染の基本的な工程は、次の様になります。模様のデザイン⇒下絵描き⇒糸目置(糸目糊を使い模様の輪郭を描く作業)⇒色挿し⇒蒸し(生地にしかり色を定着させるため)⇒水洗い⇒湯のし(蒸気でしわを伸ばす作業)⇒仕上げ

碧さんではいくつかの工程を除き、基本的にデザインから仕上げまで一括してご自身でされているため、制作の始まりから終わりまで面倒をみて心を込めて作られています。そしてぬれ描きという独特の技法を用いています。適度に水分を含ませた生地に色を挿して絵柄を描いていきます。こうすることで、ぼかしやグラデーションがより際立つ絵柄が描ける様になります。
また驚いたのは、作品によっては下書き無しで頭の中のアイデアを生地に一気に絵柄を描いていきます。取材をする前は、色挿しについてまずは色を作ってから生地に色を付ける、と思っていました。しかしお話を聞くと、実際は生地に色を何重にも重ねてイメージの色を作り出していくそうです。まさに長年の経験が作りだす技術です。

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友禅流し、という言葉をご存知でしょうか?
生地に染料を定着させるために糊を使っています。この糊を洗い流す水洗いの工程の事を友禅流し、と言われています。京都市内を流れる鴨川や堀川でこの友禅流しが行われていました。1900年前後に始まったと言われています。友禅の着物がたくさん作られていた当時はこの様な光景が京都の街中で見られたそうです。しかし1955年(昭和30年)頃から河川の水質汚染につながるため、川では次第に行われなくなっていき、1971年(昭和46年)に法律により鴨川での洗いは禁止され、今では友禅流しはもう見る事は出来ません。

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親子で描き、繋げる伝統技法

自由でユニークな作品を作る荒谷さんは2代目です。 着物はもちろんの事、近年はシャツやストールなど普段の生活で着て楽しむ事が出来る友禅の作品作りに力を入れています。コロナの影響で作り始められた手描き友禅マスクは大人気だそうです。

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荒谷さんのお父様は18歳で染色作家のもとへ弟子入りをされて以来、50年以上も描き続けておられます。お父様が描いてきた伝統の技法を活かし、2代目の尚さんが現代の生活の中に手描き友禅の良さを取り込んでいます。鮮やかでユニークな作品が店内には並びます。花や魚、てんとう虫など生き生きとした絵柄が躍り、着ると心が弾み明るくなりそうです。
お出かけが楽しくなるような一着を見つけられる空間です。

YouTube : 碧・手描き友禅チャンネル
Instagram : @ao.gensence4848

手描き友禅 碧
〒606-0834 京都市左京区下鴨狗子田町5-10
木曜日定休

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