世界に誇る伝統工芸をちょっと身近に感じてみる 憧れの機織りを西陣で体験

世界に誇る伝統工芸をちょっと身近に感じてみる 憧れの機織りを西陣で体験

冨岡 ちづこ

22.12.24

冨岡 ちづこ

世界遺産の上賀茂神社から歩いて15分ほど、閑静な住宅街にたたずむ龍村光峯(たつむらこうほう)の工房で機織り(はたおり)の体験をしてきました。

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予約時間にインターホンを押し、中に招き入れていただくと視界に入るのは、壁面にならぶ絵画のような織物の作品。
まずはこちらで工房の歴史や伝統織物、そして飾られている作品について当代の龍村周(たつむらあまね)さんから紹介いただきました。

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1894年、周さんの曽祖父にあたる初代龍村平蔵は、西陣で織物業をはじめると類まれなる美的感覚と斬新な技術により、時代を画する作品を織り上げて脚光を浴びます。すぐに同業者に模倣されるようになり、初代平蔵はさらなる創造の高みを目指すために染織や古代織物の研究に没頭するようになりました。
創始者の意志は現代まで受け継がれ、日本が誇る西陣織のなかで、日本伝統織物研究所を設立するなど古代織物の研究や復原を担ってこられました。

奈良時代や平安時代の復原された織物を見せていただくと、1000年以上の時を超えてよみがえった繊細な紋様や色使いに、うかがい知ることのできない古代の手仕事を感じ、畏敬の念を禁じ得ません。

龍村光峯の織物は「錦織」と呼びます。錦とは〈美しいもの〉を意味する言葉。こちらで見られる絹織物はキラキラと光を放っているように見えたり、光の入り方によってモチーフが浮かびあがったり、単色のように見えても角度を変えて見ると何十色の糸が隠れていたりと、絵画とは違った奥行きのある表現でつい見入ってしまいます。

いったいどんな技巧で、どれほどの時間を費やされているのか...見当もつきません。

皇室やローマ法王に献上された作品や、企業から依頼された記念品なども保管されているので、見学の際にはぜひ背景のストーリーも聞いてみてください。

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工房へは地下に降りて行きます。中に入った瞬間に目に飛びこんできた高機!その大きさたるや軽トラ以上で圧倒されました。

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今回はこの高機ではなく、こちらの織機を使って金色の箔を織ります。
足元にはペダルのような踏み木が3本並んでいるので、両足を使って順番に踏みながら、細くカットされた箔を1本ずつ糸の間に挟んでは、筬(おさ)を手前に引いてしっかり織り込ませます。糸ではなく箔を織っているのでトントンとはしません。

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小さいころ、おもちゃの織り機が欲しかったことを思い出し、何十年の時を経て織り姫になれた気分ですが、そんな思いにふける余裕はなく真剣です。

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仕上げは周さんです。やっぱり所作が美しい。体験のコツを伺うと、「ひとつ、ひとつ丁寧に行うこと」だそうです。
私が思うに「喋らないこと」です。私は何度かまちがえて戻りながら完成させました。

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入口に飾られていた源氏物語の作品が気に入って、ポストカードをおみやげに頂きました。
ちなみに紙なので折ったり水濡れは厳禁です。クリスマスやお正月の装飾用に使おうと思います。

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私は黄金のかがやきに惹かれて箔織り体験を選びましたが、20cmぐらい織り上げるのに1時間半ほど要しました。
腰痛が心配な方には、20分ほどで織ることのできるコースターサイズの機織り体験がおすすめです。お好きな色を選べますよ。
ほかにも本格的な高機織りの体験や、60分ほどの綾織り体験もあります。織機の台数が限られているので予約の際に確認しましょう。
いずれも工房の解説つきで、英語対応可です。

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最後は高機に腰かけて記念撮影をしていただきましたが、立派すぎて緊張しました!しかも手元には製作中の伝統織物が!伝統織物をつくるための織機もまた、釘を使用しない伝統的な工法で復原されたものだそうです。

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工房から上がると、お財布やネクタイなどの小物を販売されているスペースがあり、こちらでも特別な作品を見せていただきました。
写真の左手奥に見える額装の松は、皇太子妃殿下のご婚礼支度品として贈られた「雅の松」です。

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富士山柄の帛紗、カワイイですね。
常設店舗はなく、龍村光峯の作品を手にとって購入できるのはこちらの工房のみとなります。
素敵な帯もたくさんあって着物好きには目の毒です。こちらは筒状に織り上げた"本袋帯"で、お値段は怖くて聞けませんでした。

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光峯龍村工房は堀川通から玄以通を西に少し入ったところにあります。
私は地下鉄北大路駅からのんびり歩いて向かいましたが、タクシーなど利用すれば金閣寺・龍安寺・仁和寺から15分ほどでアクセスできますよ。
市バスですと「下岸町」停留所となり、京都駅からは9番系統、四条河原町からは46番や37番があります。

京都観光のおみやげを特別な体験で形にしてみませんか。

龍村光峯(光峯錦織工房)

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