京都のおみやげに宇治茶はいかがですか? 寺町通で見つける、800年のお茶文化が育んだ、時代によりそう味とスタイルでおうち時間を心ゆたかに。

京都のおみやげに宇治茶はいかがですか? 寺町通で見つける、800年のお茶文化が育んだ、時代によりそう味とスタイルでおうち時間を心ゆたかに。

冨岡 ちづこ

21.06.23

冨岡 ちづこ

日本最古の茶園がある高山寺、千利休が修行した大徳寺、そして栄西が喫茶を普及させた建仁寺など、京都にはお茶にゆかりがある歴史的建物がたくさんあります。そんな街を巡った印として、好き嫌いなく飲まれ、荷物にもならず、日持ちするお茶は京都のおみやげとして最適ではないでしょうか。豊臣秀吉もこよなく愛した宇治茶の専門店を、秀吉にゆかりのある寺町通から3軒ご紹介します。

言わずと知れた京都の銘店、一保堂茶舗

街中を南北に走る寺町通は東西に走る御池通を境にガラッと雰囲気が変わります。御池通の南側はアーケードが掛かり賑やかなショッピングストリート、一方北側には骨董品店や老舗が多く建ちならび、落ち着いた佇まいになります。喧騒から逃れゆったりとした時間が流れる、御所まで700メートルほどの舗道の間でひときわ目立つ暖簾をかかげるのは、一保堂茶舗本店。
主要百貨店に売り場を展開し、その名は全国区。お茶ブランドの日本代表とも言えます。創業は1717年。1864年の蛤御門の変で店舗が焼失して以来、現在地で営業されています。

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歴史を感じる店内でお茶を選ぶこと自体が特別感を与え、旅程をアップグレードしてくれます。
こちらでおすすめは併設されている喫茶室嘉木。

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丁寧に淹れたお茶のおいしさを体験していただくためのスペースで、茶葉をえらび、テーブルで一煎目、二煎目...と淹れながら味の変化を楽しむこともできます。お茶菓子も日替わりだそうです。

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ちなみに嘉木という名前は、包装紙のデザインにもなっている「茶は、南方の嘉木なり」という唐の時代の「茶経」の一節が由来だそうで、一保堂の代表的な煎茶の銘柄にもなっています。

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時間のない方にはテイクアウトがおすすめです。京都高山寺に伝わる絵巻、鳥獣戯画のような可愛いイラストの紙コップでホットもアイスもいただけます。

商品はおおよそ30銘柄あります。茶葉の保存が気になる方にも安心、5回ほどで使い切ることが出来る50g袋で売られていたり、残りがちな抹茶も1杯分のスティックタイプにして販売されていたりと、旅のお土産にしやすい心配りが行き届いたラインナップです。

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もちろん本店限定の煎茶も見逃せません。買った茶葉を王道で保存するなら、茶筒の最高峰、開化堂製のオリジナル茶筒も京都の旅の思い出には最適です。

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茶器類ではオリジナルの急須もいくつか販売されていて、常滑焼のアイボリーの急須は北欧スタイルとも相性が良さそうなやさしい色味と質感にひとめ惚れです。私事ですが、いま使っている冷茶ポットが割れたら、次は一保堂さんのカラフェを買おうと心に決めています。今回は、ボジョレヌーボーのように毎年発売を楽しみにされている人も多いという新茶をテイクアウトしてお店を後にしました。

ちなみに爽やかな白い暖簾がお目見えするのは新茶発売から9月までの夏季限定です。この期間は店内もさりげなく衣替えされるそうですから、お店に行かれる際はインテリアにも注目してみてください。

一保堂茶舗  

 

日本一たのしいお茶屋さん、ごえん茶

一保堂を出て南へ、御池通を越えて寺町アーケード商店街の中へ入り右を見ながら歩いていると、鳩居堂本店の次にあらわれるのが、京都ぎょくろのごえん茶です。

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京都らしい控え目な間口で、一見お茶屋さんとは気づかず通り過ぎてしまいそうなこちらは、2016年オープンのまだ若いお店ですが、宇治田原で180年以上つづく矢野園の玉露を扱う確かなお茶専門店です。

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店内を覗くと、両サイドに整然と並んだポップでキャッチーなパッケージが目を引きます。これらは様々なメッセージがイラストとともに描かれた『ごあいさつ茶』と、84円切手を貼ればそのまま送れる『ちゃより』。

「おつかれさま」「いつもありがとう」といった日常に伝えたいひとことから、季節のイベントに合わせたメッセージまで数百種類が発売されているとあって、好みのデザインやメッセージを探すのに夢中になっていると、いつの間にかメッセージを渡す相手のほうを探しているという逆転現象が起きます。

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中身は基本的に玉露のティーバッグですが、英語のメッセージには飲みやすい和紅茶だったり、健康祈願のメッセージには玄米茶が入っていたりと細やかな心づかい。

オリジナルデザインも小さいロットで作ってもらえるので、結婚式のプチギフトや、イベントの記念品など用途は多岐にわたります。

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自転車での移動販売からはじまり、お店を構えるまでたくさんのご縁があったそうで、現在も企画から製造販売まで自社内で完結され、その楽しそうな雰囲気が商品を通して伝わってきます。

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日本一たのしいお茶屋さん"と自負されるごえん茶は、最高級茶葉の玉露もカジュアルダウンして、ウキウキするようなお買いもの体験を提供してくださいます。

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店頭にならんだ、地元の菓子職人さんが作る松風もお茶請けにぴったりでおすすめです。
京都ぎょくろのごえん茶

地元に根付いて230年、蓬莱堂

さらに寺町通を下がって錦市場を越えると、厳かな老舗のたたずまいの蓬莱堂茶舗があります。こちらではご主人にお話をうかがいました。

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1803年の創業以来、町家を補修しながら時代を跨いで京都の街を見つめてきました。昨年には新たに淹れたてのお茶を試飲できるカウンターを作られました。茶葉によって料金は変わりますが、お抹茶を気軽にいただくこともでき、ご主人が流麗な手つきで立ててくださったお抹茶は思いのほかマイルドでつい「おいしい!」と声をあげてしまいました(現在は感染症予防により休止中)。

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コロナ禍以前は通るたびに外国人のお客さまを店内に見かけたのですが、日本茶に興味をもって来店された方々のクチコミが世界中に拡がり、さらなる海外からのお客さまを呼んでいるそうです。

実は蓬莱堂は、抹茶ブームに次いで海外で注目されつつある玄米茶発祥のお店でもあり、さらにはミシュラン日本版で紹介されているお茶専門店は蓬莱堂と一保堂の2店だけだそうです。

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そして、海外の方々のほうが、あれこれ質問しながらじっくり吟味して商品を選んでいかれるとのことですから、来店した際には「京都の老舗」に気後れすることなく、どんなシチュエーションで飲むのか、どんな器を使うのか、お料理との相性や、淹れ方など疑問に思うことはどんどん質問してみてください。これはどのお店でも言われました。

走り庭の奥に拵えた茶室でお茶会やお稽古をされているご主人は、フレンチと宇治茶を組み合わせたり、シャンパンパーティーのような洒落た野点を催されたりと、お茶に無限の可能性を追求されているように感じました。お話をするとたくさんの学びや気づきがあると思います。

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茶葉は昔ながらの量り売り、また清水焼の茶碗や、常滑焼の急須など実用性を兼ね備えた茶器や茶道具も取りそろえてあります。
蓬莱堂茶舗

宇治茶のダイバーシティを感じて

以前、宇治茶のオンラインセミナーを受講した際、見よう見まねで淹れた煎茶があまりにも美味しくて、仕事で忙しくしている友人にも個包装された茶葉を送ってあげようと探し回ったのですが見つからず、結局一保堂さんのティーバッグを送ったら、ものすごく喜んで連絡をしてきてくれました。ティーバッグを好んで使う多忙な人に茶葉を贈ったら、単なる好みの押しつけだったかもしれません。

それぞれの嗜好やライフスタイル、価値観など個性に合わせて選べる懐の深さが日本茶にはあります。ペットボトルのお茶だって日本文化なのです。

流行のドリンクのような派手さはないけれど、語れたらちょっとカッコイイ。宇治茶のお店は京都の街中たくさんあるので、散策中に見つけたら気軽に立ち寄ってみてください。

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