古都京都は近代建築もすごいんです 三条通は100年級のレトロビルを仰ぎながら歩くのが正解 ~後編~

古都京都は近代建築もすごいんです 三条通は100年級のレトロビルを仰ぎながら歩くのが正解 ~後編~

冨岡 ちづこ

21.09.10

冨岡 ちづこ

前回に続き、京都の近代化の面影を残す三条通りを歩いています。イノダコーヒーでリフレッシュしたら三条通り散策を続けましょう。

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次の堺町通の角に旧日本生命京都支店ビルがあります。
1914年(大正3)に建てられた白い石張りのモダンな建物です。2階建てで外壁に塔屋がついています。このあとも登場する辰野金吾氏の設計です。

セレクトが素敵なユーズドの着物屋さんが入っていましたが、残念ながらコロナ禍に閉店され、現在、内部は見られません。建物の裏手にはTSUGU京都三条という滞在型のデザイナーズホテルが開業しているので、京都でホテルをお探しならこちらもチェックしてみてください。

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さらに三条通りを進むと、迫力の京都文化博物館が目に飛び込んできます。
1906年(明治36)竣工の旧日本銀行京都支店ビルです。赤レンガに白い花崗岩を帯状にめぐらせたデザインと屋根から突き出た窓は、同じく辰野金吾氏設計の東京駅と似ていますよね。
19世紀後半にイギリスで流行した様式で、日本では「辰野式」と呼ばれました。

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こちらでは中に入って内装もゆっくり見学してみましょう。
手前に銀行の営業カウンターだった部分があり、鉄柵の向こう側では、行員さんたちがせわしなく勤務されていたのでしょうか。現在は展示ホールになっています。

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そして、右手の所長室、文書課室だったところを通って建物の裏側に抜けると前田珈琲文博店があります。じつは金庫室をそのままカフェに改装されていて、リラックスできるお気に入り休憩スポットです。入り口の重厚な扉で金庫だったことが見て取れます。

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通りに戻り、その並びに建つのが中京郵便局。1902年(明治35)竣工で、大蔵省官僚としてイギリス留学を経験した吉井茂則氏の設計です。
建物の改築計画が持ち上がるたびに保存を望む声が上がり、1976年にファサード保存という方法を用いて改装されました。ファザード保存とは、主に歴史的建造物の中だけを改築して外観はそのまま残す、という方法で、この中京郵便局舎が最初の実施例だそうです。
当時は三条通でもハイカラの象徴のような建物だったと思われますが、現存する吉井氏の作品も多くはないようです。
広々とした局内には建物に関する記事や古写真が展示された「壁面博物館」を見学できますよ。

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通りをさらに進むと南北に走る烏丸通に出てきます。南側角に京都市の道路元標の石標が立ち、市区町村間の距離表示の原点とされています。

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ちなみに三条通りの少し北側の烏丸通り沿いには1926年(大正15)竣工の旧京都中央電話局ビル(現在は新風館)があります。待ち合わせやデートスポットとして親しまれてきた新風館が、2016年に閉館しホテルになると工事が始まったときには多くの京都人が嘆き悲しみました。

しかし昨年、長年見慣れた建物の正面部はそのままに、新風館の名も残してリニューアルオープンしました!ミニシアターやCAFE KITSUNEなどユニークなテナントが入って、再び周辺のランドマークとしての役割を担っています。

旧京都中央郵便局を設計したのは東京中央郵便局をデザインした吉田鉄朗氏です。研ぎ澄まされたモダニズムと、新たな風を吹き込んだ新しい新風館。隈研吾氏の設計にも注目してみてください。

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三条通りの少し南へ行ったところに烏丸通り西側に建つのが、旧第一勧業銀行京都支店、現みずほ銀行京都中央支店です。設計は辰野金吾氏ですが、現在の建物は2003年に再建されたレプリカです。辰野氏はその設計の頑丈さから「辰野堅固」とも呼ばれ、当初、保存を求める要望書が京都市と銀行に提出されましたが叶いませんでした。

その少し南に見える雰囲気のよく似た大きなビルはホテルモントレ京都です。2007年開業でやはりアーツアンドクラフツ時代の英国を思わせるデザイン。カフェバーなど内装もクラシックで、ソフト面も充実したおすすめのホテルです

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再び三条通りに戻り、スターバックスを過ぎて右手に見えるのは、旧西村貿易店社屋(文椿ビルヂング)です。1920年(大正9)築の木造2階建てで、2004年にテナントビルとしてリノベーションされました。濃い赤のタイルにグリーンのオーニングや、ビル名が雰囲気によく合っていますよね。

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さて、寺町からここまで750メートルほどの間に、これだけご紹介したい建物がありました。京都は近年、時の流れとともに歴史的価値のある建物が少なくなって、味気ない街並みに変わる一方で、いくたびの解体の危機を乗り越えて守られてきた文化財もあります。

この様にじっくり歩いてみると、いかにも都会的につくられた店舗よりも、昔ながらの建物を活用してオープンしたショップや飲食店のほうが地元にも受け容れられて長く続いているように感じます。

こんな風に京都の近代化を見てきた建物を楽しみ、少しノスタルジックな気分になりながら京都の中心を横断できるのもここ三条通だけです。

ぜひお天気の良い日に散策してみてください。紫外線対策も忘れずに!

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